個人事業主やフリーランスの方も加入することが義務付けられている医療保険制度。会社員であれば、会社が手続きを行って社会保険の中の健康保険に加入していますが個人事業主やフリーランスの方は「自分で」健康保険に加入しなければなりません。

この記事では個人事業主・フリーランスが加入できる健康保険の種類について、そして加入方法をご紹介していきたいと思います。

個人事業主が加入できる5つの健康保険

  • 1.国民健康保険
  • 2.健康保険組合
  • 3.任意継続制度の利用
  • 4.健康保険の被扶養家族
  • 5.再就職で社会保険加入

大きく分けて5つの健康保険に個人事業主やフリーランスの方は加入できます。一般的には「国民健康保険」に入る方が一番多いとは思いますが、他にも3つの選択肢があります。

それぞれ特徴やメリット・デメリットがありますので次から詳しく見ていきます。

個人で加入できる「国民健康保険」

個人事業主さんやフリーランスの方が加入できる「国民健康保険」は、会社員の方や生活保護を受けている方を除く方々が加入の対象となっています。各自治体が運営・管理しているのですが、手続き等を行う場所は「お住いの市区町村の役所」です。

会社員の社会保険とは違い、自分で手続きを行わなければならないため、会社を退職する場合には忘れないように注意が必要です。

国民健康保険のメリットは何?

  • 収入によって保険料が安くなる
  • 保険料の軽減処置あり

国民皆保険ということで加入が義務化されていますが、「国民健康保険は一般的」というメリットしか見当たらないのが現状です。前年度の収入から保険料が決定され、翌年の支払いが開始されます。

国民健康保険は各自治体によって多少の保険料の差がありますので一概には言えませんが、前年度所得が400万円未満の方はその他の保険に加入するよりも安くなる傾向があります。

国民健康保険のデメリットはあるの?

  • 所得が上がれば保険料も割高
  • 扶養認定制度なし
  • 傷病、出産手当金なし
  • 育休中の保険料免除なし

所得によって保険料が変化するのは、メリットでもありますがデメリットでもあります。前年度の所得を参照しますので会社員として働いていた時などの給与を基に国民健康保険料が決定するため、退職した後に高い保険料が来る可能性があります。

また、社会保険であれば家族などを扶養できる認定制度がありますが国民健康保険にはありません。扶養家族が多ければその分保険料も高くなってきますのでここも注意が必要です。

国保の保険料や自己負担額は?

国民健康保険料 各自治体による
自己負担額 3割(※)

※:義務教育就学後から70歳未満の数値。詳しくはこちら

国民健康保険の保険料は各地域によって多少の差があります。詳しくはお住いの市区町村のホームページやお問い合わせで確認していただくことにして、厚生労働省の平成29年度のデータを紹介します。

  1.25  
  1.15 1.25
  1.05 1.15
  0.95 1.05
  0.85 0.95
    0.85

最新のデータを探しましたが平成29年度から発表されていないようで、令和版は一つも見つかりませんでした。一応こちらの見方は「1.00」を境にそれ以上なら保険料が高い、以下なら安いという簡単な指標です。もちろん、市区町村によって違いますので都道府県の中でも高い・安いがあるのが現状となっています。

国民健康保険の加入手続き方法は?

個人事業主やフリーランスの方が国民健康保険に加入しようと思い、手続きする際には「窓口手続き」と「郵送手続き」が一般的となります。

窓口手続きで必要となる持ち物

  • 本人確認書類(運転免許証やパスポート)
  • マイナンバーカードや通知カード
  • 社会保険の喪失証明書や退職証明書など喪失年月日のわかるもの

郵送手続きで必要となる書類

  • 国民健康保険資格適用開始届(申請書)
  • 健康保険資格喪失証明書や退職証明書の写し
  • 本人確認書類の写し

郵送の場合には、本人確認書類は「運転免許証・パスポート・個人番号カード・在留カードなど顔写真付きの証明書から1つ」もしくは「年金手帳・年金証書・社員証・学生証・病院の診察券など顔写真のない証明書から2つ」など提出書類をよく確認してください。

また、各自治体で違いもあります。詳しくはご自身の住んでいる市区町村のホームページで確認してみてください。

職種別で加入「健康保険組合」

意外と知らない方も多い「健康保険組合」。個人事業主やフリーランスの方が加入できる健康保険の一つとして選択できますが、健康保険組合はたくさんあるため自分で探して選ぶ必要があります。

すべてをご紹介することはほぼほぼ不可能ですので、今回はいくつかの例を出して紹介していきたいと思います。

「健康保険組合」ってそもそも何?

健康保険とは、みんなが元気に健やかに暮らすために設立された制度。その健康保険を公法人(公共団体)として、常時700人以上の従業員、もしくは同業種で3000人以上の従業員が集まる事業所が厚生労働大臣の許可を得て設立したものが健康保険組合です。

それぞれの事業主や事業者が保険料を出し合い、その保険料から病気やケガ、出産、死亡などで必要になる医療費・現金を支給する、つまり助け合いの仕組みになっています。

健康保険組合のメリット?

  • 収入に関係なく保険料固定
  • 高額療養費の一部払い戻し
  • 出産一時金などあり

収入に関係なく、健康保険料が一律というのは収入が高い方にはとてもメリットになります。国民健康保険や社会保険などは収入によって変動しますので大きな違いです。

また、高額医療費の一部払い戻しや出産一時金など通常の健康保険と同様に受け取ることが出来ます。

健康保険組合のデメリットとは?

  • 収入が低いと保険料が負担
  • 扶養制度なし

メリットである保険料の固定はデメリットにもなります。同一の保険料となるため、収入が低い場合には国民健康保険などと比べて割高となることもあります。

それと健康保険組合に家族や従業員を一緒に加入させることは出来ますが、扶養制度ではありません。そのため、会社員の入る社会保険のように何人扶養に入っても保険料は変わらない、ということはないのでそこも注意が必要です。

健康保険組合の保険料・自己負担額は?

健康保険組合も国民健康保険などと同じ自己負担額です。(こちらのページに詳しく書いていますのでどうぞ。)保険料は各組合によって違いがありますので2つ例を出して紹介します。

関東信越税理士国民健康保険組合

0歳から74歳までの被保険者(月額)

資格区分 金額
税理士である組合員 26,000円
勤務税理士である組合員 26,000円
職員である組合員 15,000円
組合員の家族 8,000円

税理士さんのための健康保険組合となり、関東信越税理士会会員の中の57.0%が加入している組合です。昭和33年に設立許可を受け、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、新潟県、長野県の6県を区域として構成される国民健康保険組合です。

詳しくは「関東信越税理士国民健康保険組合の公式ホームページ」をご覧ください。

文芸美術国民健康保険組合

組合員は収入にかかわらず均等(月額)

資格区分 金額
組合員 21,100円
家族 11,600円

加入の条件は日本国内にお住いで、文芸・美術及び著作活動に従事し、組合加盟の各団体の会員であることです。その他にも細かく書かれていますので公式ホームページでご確認ください。

各業種で加入できる健保をリサーチ

上の健康保険組合のように加入条件や保険料などはさまざまです。業種によって入れる・入れないもありますので、ご自分にあった健康保険組合を見つけてみてください。

健保組合への加入の仕方は?

ここではエンジニアの関連業の方向けの「全国ソフトウェア連合会」を例に出します。こちらは「加入申込書」を記入して会員登録を行うようです。

加入条件や加入方法も健康保険組合ごとにそれぞれなのでしっかりと確認してみましょう。

前保険を続ける「任意継続制度」

会社員として働き、個人事業主やフリーランスへ転向する方も少なくありません。その際、社会保険を抜けて国民健康保険などに変えると思いますが、実は社会保険をそのまま継続できる制度があるのです。

ただし、社会保険の資格喪失日から20日以内に申請しないと制度の利用ができなくなってしまうので注意が必要です。

「任意継続制度」ってどういう意味?

退職した前の会社で加入していた健康保険をそのまま引き継ぐことのできる制度です。「退職=社会保険の脱退」ではなく、2年間を上限に任意で継続か否かを選択することが出来ます。

扶養する家族が多ければそのまま継続するほうが保険料が安い場合も多いですし、前年度所得が多い場合も社会保険を脱退しないほうが良い場合もあります。本当にケースバイケースなので役所でお見積りを取ったりして比較してみると良いと思います。

社会保険の任意継続のメリットは?

  • 収入によって乗り換えより安い
  • 扶養制度を継続できる
  • 給付の内容が手厚い

一番のメリットは扶養制度をそのまま継続できるところではないでしょうか。国民健康保険に変わると扶養からも外れてしまいますので、扶養者も一緒に国民健康保険に変わり、保険料もかかってきてしまいます。

そして給付などの内容もそのまま継続ですので何かがあった時の備えになりますね。

任意継続制度にデメリットはある?

  • 負担額100%になる
  • 2か月以上在籍の条件あり

それまで会社と社員で5:5の均等割だった保険料が100%の自己負担となります。つまり、単純計算で退職前の倍の金額を納めるということです。

また、条件として2か月以上の社会保険の加入というものがあります。ほとんどの方が満たしているとは思いますが、早期退職の場合こちらの制度は利用できないので覚えておきましょう。

個人事業主の任意継続方法は?

こちらも加入していた健康保険によって異なりますので「全国健康保険協会(協会けんぽ)」を例にします。まずは「任意継続被保険者資格取得申出書」を記入し、お住いの地域を管轄する協会けんぽに退職日の翌日から20日以内に提出します。

もしも被扶養者がいる場合にはそちらを証明できる「所得証明書」や「源泉徴収票の写し」なども一緒に提出します。すると大体2~3週間後に保険証が手元に届くという流れになっています。

※何度も言いますが期限がありますので忘れずに、早めに動かないと継続できませんのでご注意ください。

「健康保険の被扶養家族」に入る方法

健康保険の被扶養家族に入るためには大前提として家族のうち誰かが健康保険に加入している必要があります。健康保険に誰も加入していない状態で被扶養家族に入ることは不可能なので当然と言えば当然ですが。

健康保険の被扶養家族に入るって何?

両親や配偶者などが加入している健康保険で扶養の対象者として認められると被扶養家族として健康保険に入ることが出来ます。病気やケガ、亡くなった場合や出産の際など保険給付があります。

ただし、家族の健康保険の被扶養者になるにあたって条件がいくつもありますのでしっかりと確認していきましょう。

被扶養者として加入する条件は?

  • 1.配偶者・子・孫・兄弟姉妹で生計を維持している
  • 2.被保険者の三親等以内の親族
  • 3.事実婚の配偶者及び父母・子
  • 4.年間収入が130万円未満

上記のような条件があります。詳しくは「全国健康保険協会」などのホームページを参考にしてみてください。

収入の上限があることも忘れずに。年間と言いましても1/1~12/31の1年間という訳ではなく、直近の月収を3ヶ月平均にして基準を満たす必要があるのです。

もしも扶養の条件130万円を超えると?

年間130万円を超えなければそのまま被扶養者として社会保険料を支払わずに済みます。しかし、超えてしまうと外されてしまい、自身で健康保険に加入しなければならなくなります。

ただし、一時的にたまたま130万円の基準を超えてしまった際には扶養を外されずに厚生労働省から通知が届きます。しっかりと内容を確認して被扶養者から外れたくない場合には気を付けて対応していきましょう。

130万円を超える基準は?

  • 1.「108,333円/月」を超える
  • 2.直近3ヶ月の平均が「108,333円/月」を超える

健康保険組合が被扶養者の認定を取り消す判断は、月収108,333円です。これが2、3ヶ月続くと危ないと考えてください。たまに基準の金額を超えてその次の月には減って平均すると基準金額を超えていなければ大丈夫です。

基準金額は超えたらバレる?バレない?

バレないならばたくさん稼いで被扶養者として保険料は支払わなければ良い、と思う方もいるかもしれませんがバレます!2019年に全国健康保険協会が行った調査では「約6万6千人」の被扶養者が扶養を外されたようです。

すべての方が年間130万円を超えて取り消しを受けた訳ではありませんが実際に外されている方はいます。個人事業主やフリーランスになって最初は収入が少なく、それから多くなっていき基準の金額を超えてしまったらすぐに申請をしないと後々多額の医療費の返還を求められることもあるので注意です。

被扶養者になるための手続きは?

被扶養者になるという日から5日以内に健康保険に加入している方から「被扶養者(移動)届」をもらって日本年金機構に提出します。その際に収入を証明する書類や三親等以内を証明できる書類なども一緒に送ります。

お住いの地域を管轄する年金事務所へ郵送、電子申請、窓口での手続きが可能です。5日以内と申請期間が短いので退職前から準備を進めておくと良いでしょう。

再就職で社会保険に加入する

最後の方法としては、「再就職して社会保険に再加入する」です。退職前に再就職先を探したりしてそのまま社会保険に引き続き加入する方法ですが、個人事業主やフリーランスの方には関係ないかもしれないですね。

【まとめ】個人事業主の入れる健康保険

いかがだったでしょうか。個人事業主やフリーランスの方が加入できる健康保険を5つ紹介してきましたが、実はもう一つあるのです。

それは個人事業主でも社会保険に入れる方法です。被扶養者にならなくても会社員と同じく社会保険に加入する方法はこちら(現在準備中)からご覧ください。