「国民皆保険制度」という言葉は一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?その名の通り、全ての日本国民が何らかの保険に加入して、日本全国にあるどの病院にかかったとしても同じ医療費で医療を受けることのできる制度です。
個人事業主・フリーランスは「国民健康保険」、会社員は「社会保険(正確にはその中の健康保険ですが、この記事では社会保険として扱います」に入るというのが一般的だと思いますが、その違いについてお間違えのないように確認していきましょう。
- 個人事業主が主に加入する国保とは
- 国民健康保険って何のこと?
- 自分で負担する国民健康保険の額は?
- 国民健康保険料はいくら?
- 国保は扶養に入れることはできない?
- 会社員などが加入する社会保険とは
- 社会保険って何のこと?
- 会社員が負担する社会保険額は?
- 業務上の受信は社保のみではダメ?
- 任意継続制度って何のこと?
- 【まとめ】「国保」と「社保」の違い
- 国民健康保険のメリット・デメリット
- 社会保険のメリット・デメリット
個人事業主が主に加入する国保とは
今現在、個人事業主やフリーランスの方は国民健康保険に入っていることがほとんどだと思います。もともと会社に勤めていて社会保険に加入していた方も個人事業主になると決めて会社を辞めた14日以内に市役所で届け出を提出する必要があります。
社会保険から健康保険への変更届出方法についてはこちらで詳しく書いていますのでどうぞ。
国民健康保険って何のこと?
加入義務を簡単に言いますと、会社員の方や生活保護を受けている方以外全員が加入しなければならない保険です。地方自治体が運営している健康保険で、お住いの市区町村の窓口で国民健康保険の手続きをすることが出来ます。
気を付けていただきたいのが、社会保険から健康保険への切り替えの際に自分で手続きを行うのですが、もしも期間以内(14日)に加入手続きをしなかった場合でも遡って保険料を納める必要があります。もちろんその期間は無保険となりますので、病院で診察を受けたり、処方箋などを受けた場合には医療費は全額自己負担となってしまいます。
自分で負担する国民健康保険の額は?
小学校入学前まで | 2割 |
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小学校入学後~70歳未満 | 3割 |
70歳以上~75歳未満 | 2割(※現役並み所得者3割) |
75歳以上 | 1割(※現役並み所得者3割) |
- ※現役並み所得者とは、以下のいずれかに該当する方となります。
- (1)後期高齢者医療制度:世帯内に課税所得の額が145万円以上の被保険者がいる場合
- (2)国民健康保険:世帯内に課税所得の額が145万円以上の被保険者(70~74歳に限る)がいる場合
- (3)被用者保険:被保険者が70歳以上であって、その標準報酬月額が28万円以上である場合
- 詳しくは「厚生労働省のホームページ」をご覧ください。
例えば国民健康保険に加入している個人事業主やフリーランスの方が風邪で病院に行ったとしましょう。診察を受け、風邪薬をもらって全部で3,000円を支払いました。
これは国民健康保険に入っているということで3割負担となっていて、実際には10,000円の医療費がかかっています。つまり健康保険に加入していないと自己負担額は100%で、この例の場合ですと1万円を支払わなければならないということになります。
国民健康保険料はいくら?
まずは、各地域によって保険料は違います!計算の方法はかなり複雑なのでもしも知りたい方は、お住いの市区町村のホームページで確認してみてください。
現状出ている厚生労働省の「市町村国民健康保険における保険料の地域差分析」を見てみると平成29年度版ですが、四国・中国・九州地方が保険料指数が高く、中部・東北地方が低い傾向にあるようです。
参考までに東京都江戸川区の計算方法でシュミレーションをしてしました。「30歳 年収390万円」ですと、令和3年度で年間405,970円、10回払い(6月~翌年3月)で1回あたり40,597円という結果となりました。
年齢や収入額など様々な条件によって保険料は違いますので、個人事業主・フリーランスの方は確定申告を見ながら各自治体にお問い合わせすると詳しく知れると思います。
国保は扶養に入れることはできない?
家族など働いていなかったり、学生の場合収入がありませんよね。他に加入できる公的医療保険がない場合にはその方々の分の保険料を負担しなくてはなりません。
多くなれば多くなるだけ保険料の負担額も増えていくことを覚えておいてください。
会社員などが加入する社会保険とは
まず、社会保険(広い)とは「労働保険」と「社会保険(狭い)」となり、けがや病気などリスクを社会全体で支え合うという仕組みです。労働保険には「労災保険・雇用保険」が、社会保険(狭い)には「健康保険・介護保険・厚生年金」があり、こちら5つすべてで社会保険(広い)となります。
今回扱うテーマである「社会保険」は、狭い社会保険の中の「健康保険」を指します。これからこちらのことを国民健康保険と分けてわかりやすいので、便宜上「社会保険」という言葉を使って説明していきたいと思います。
社会保険って何のこと?
会社に勤める社員さんなどが加入する社会保険は、「全国健康保険協会」や「各健康保険組合」が運営しているものとなります。大きな企業ですと独自の健康保険組合がありますがそれ以外にも、いくつもの企業が集まって構成されている、または「協会けんぽ」という全国健康保険協会の健康保険に加入する場合もあります。
正社員だけではなく、契約社員やパート・アルバイトの方も一定の条件を満たすことで加入の対象となります。
会社員が負担する社会保険額は?
自己負担 | 5割 |
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会社負担 | 5割 |
社会保険料は大きく「収入」「地域」「年齢」「どこの組合に属しているか」の4つによって決まります。こちらは代表的な組合を例に出しましたが、地域による健康保険料の差を持たせない健康保険組合もあります。
「全国健康保険協会」を例に出しますと、月30万円の収入がある社会保険加入者は会社側と17,460円ずつ負担することになります。東京都の令和3年4月納付分からの保険料額になりますので、各組合の該当するホームページ等で確認してみてください。
業務上の受信は社保のみではダメ?
広い意味である「社会保険」の中には「労災保険」というものがあります。社会保険はあくまで健康保険となり、通勤中や勤務中のケガ・病気について労災扱いにはなりません。
自身の加入している社会保険は労災保険にも対応しているかどうか、しっかりと事前に確認し、もしも確認していなかった場合には会社に連絡を取り、対応方法を相談することをオススメします。
任意継続制度って何のこと?
会社を辞めて社会保険も解約してしまっても2年間を上限としてそのまま社会保険に加入し続けることのできる制度です。国民健康保は家族などを扶養することが出来ませんでしたが、社会保険は扶養制度があるためメリットとなることも多々あります。
ただ、任意継続となると会社負担分はなくなり、自己負担額が100%となります。会社を退職する前にお住いの役所に行って見積りをもらって比較するとわかりやすく選ぶことができると思います。
【まとめ】「国保」と「社保」の違い
今まで「国民健康保険」と「社会保険」をそれぞれ見てきましたので、そちらをわかりやすく比較していきます。
項目 | 国民健康保険 | 社会保険 |
---|---|---|
加入条件 | 健保に加入条件以外 | 健保に加入条件に該当 |
保険料 | 年間405,970円(※1) | 年間209,520円(※2) |
医療負担額 | 原則3割(※3) | 原則3割(※3) |
扶養制度 | なし | あり |
- ※1:「年収390万円、30歳、東京都江戸川区」の数値
- ※2:「年収390万円、30歳、全国健康保険協会」の数値
- ※3:義務教育就学後から70歳未満の数値
国民健康保険のメリット・デメリット
メリット | 所得が基準値を下回ると自動的に減額 |
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デメリット | ・所得が上がれば保険料も割高 ・扶養認定制度なし ・傷病、出産手当金なし ・育休中の保険料免除なし |
国民健康保険組合に加入していると給与に関係なく保険料は一定ですが、市区町村の国民健康保険では所得によって上下します。所得が高く、扶養もとなるとどんどん保険料は上がっていく計算になります。
社会保険のメリット・デメリット
メリット | ・保険料が会社と折半 ・扶養認定制度あり ・給付の内容が手厚い ・任意継続制度あり |
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デメリット | 任意継続時は負担100% |
国民健康保険に比べて社会保険のデメリットは非常に少ないと言えます。任意継続制度の負担額をデメリットに書きましたが、継続しなければ負担額は100%にはなりませんし、上手に加入すると良いと思います。